8月22日(日)聖霊降臨節第14主日

『毒麦のたとえ』と『からし種、パン種のたとえ』 マタイによる福音書13章24~33節


 今日は、「『毒麦のたとえ』と『からし種、パン種のたとえ』」と題して、マタイ13章24~33節のみことばに学び、信仰の糧を与えられたいと思います。

24 イエスは、別のたとえを持ち出して言われた。「天の国は次のようにたとえられる。ある人が良い種を畑に蒔いた。25 人々が眠っている間に、敵が来て、麦の中に毒麦を蒔いて行った。26 芽が出て、実ってみると、毒麦も現れた。27 僕たちが主人のところに来て言った。『だんなさま、畑には良い種をお蒔きになったではありませんか。どこから毒麦が入ったのでしょう。』28 主人は、『敵の仕業だ』と言った。そこで、僕たちが、『では、行って抜き集めておきましょうか』と言うと、29 主人は言った。『いや、毒麦を集めるとき、麦まで一緒に抜くかもしれない。30 刈り入れまで、両方とも育つままにしておきなさい。刈り入れの時、「まず毒麦を集め、焼くために束にし、麦の方は集めて倉に入れなさい」と、刈り取る者に言いつけよう。』」

31 イエスは、別のたとえを持ち出して、彼らに言われた。「天の国はからし種に似ている。人がこれを取って畑に蒔けば、32 どんな種よりも小さいのに、成長するとどの野菜よりも大きくなり、空の鳥が来て枝に巣を作るほどの木になる。」33 また、別のたとえをお話しになった。「天の国はパン種に似ている。女がこれを取って三サトンの粉に混ぜると、やがて全体が膨れる。」

 世の中になぜ悪があるのか、これは、時代を越えた普遍的な問いです。

 善良でありたいと思う人たちには、善良への努力を砕くような悪の存在に幻滅し、途方に暮れてしまうこともあります。

 なぜ、善良で信仰深い市井の人に、理不尽な悲惨な不幸が生じるのか、とは、旧約聖書のヨブ記のテーマです。この書が時代を越えて読み継がれているのは、そこに、この世の現実が語られているからだと思います。

 (不幸に見舞われたヨブ、自分に非がないはずなのに、納得がいかないと嘆くヨブに、一見正当な理由を述べながら、一見労わっているようでありながら非を認めないヨブを責めるのは友人知人たちです。まさに、この世の現実が描かれていると思います。)

 8月は、広島、長崎への原爆投下の日や終戦記念日を覚えて、戦争への深い反省と懺悔、そして、平和を、わたしたちは祈ります。沖縄に住んでいたとき、佐喜眞美術館の「沖縄戦の図」(丸木位里・俊 制作)を観に行ったことがあります。沖縄の地上戦の戦跡を巡っていて聞いた戦争の悲惨と残虐、残酷に重ね合わせて観たことを思い出します。悪の現実を見させられたような感覚です。「慰霊の日」が近づくと体調を崩してしまう人たちが多いことを見聞きし、心が痛みました。

 イエス様は、そのようなこの世の現実の只中で「毒麦のたとえ」を語られました。

 ここで、イエス様は、良い麦の種を蒔いても、いつのまにか毒麦が混じっている、という現実を語っておられます。しかも、良い麦と毒麦は、収穫の時まで、隣り合わせだとおっしゃっておられるのです。

 毒麦が良い麦まで侵さないだろうかと心配になりますよね。けれども、早い時期に毒麦を刈り取ってしまいたい人たちに対して、イエス様は、「刈り入れまで、両方とも育つままにしておきなさい」とおっしゃるのです。

 良い麦と毒麦の混在しているようなこの世の現実の姿は、人々を迷わせ、判断をも誤らせないだろうか。

 豊かな収穫を望んでいる人たちは、良い麦が毒麦に侵されないようにと、もっぱら手入れを怠らないようにしなければならないということでしかないのでしょうか。

 イエス様は、加えて、「からし種とパン種のたとえ」を用いてお語りになられました。

 イエス様は、「天の国はからし種に似ている。人がこれを取って畑に蒔けば、どんな種よりも小さいのに、成長するとどの野菜よりも大きくなり、空の鳥が来て枝に巣を作るほどの木になる。」と言われました。また、「天の国はパン種に似ている。女がこれを取って三サトンの粉に混ぜると、やがて全体が膨れる。」と言われました。わたしたち被造物の間にわけへだてなく蒔かれるこれらの福音の種は、からし種のように、また、パン種のように、膨らみ、大きくなる、と言っておられるのです。

 悪の現実に対して、悪の力の前で失望し、委縮し、絶望し、諦めていきそうになるわたしたちに、だからこそ、天の国(神の国)の福音の種は確かに蒔かれ、膨らんでいく、大きくなっていく。これは、悪の現実に対して打ち勝っていくチャレンジのみことばでもあると思います。

 また、「空の鳥が来て枝に巣を作るほどの木になる」とは、自他をも癒し、励まされるみことばだと思います。

 今日のみことばから、神様の愛と希望の力をいただき、イエス様が教えてくださる良い種、からし種、パン種を大切にしていきたいですね。


日本基督教団 板橋大山教会

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