2024年11月24日「喜びなさい」

フィリピの信徒への手紙4章4~9節

1. 主においていつも喜びなさい

 今日の聖書箇所は、パウロがフィリピの教会に宛てた手紙から、「主において、常に、喜びなさい」という有名なみ言葉について考えていきます。

 まず、「キリスト・イエス」という言葉に注目しましょう。「キリスト」とは、古代イスラエルの儀式で「油を注がれた者」を意味し、神から特別な使命を与えられた人を指します。イエス様が受けた使命は、十字架によって罪人を救うことでした。

 しかし、当時のローマ帝国では皇帝が神のように崇められており、「救い主はイエス様だ」と宣言することは、ローマへの反逆と見做される危険がありました。日本でも、徳川時代の「キリシタン禁止令」や、太平洋戦争時の天皇崇拝など、類似の状況がありました。

 そんな中、パウロは逮捕され、牢獄に入れられました。その牢獄の中から彼はフィリピの教会に手紙を書き、「喜びなさい」と語りました。これは命がけの告白であり、彼の「キリスト・イエス」という言葉には深い意味が込められています。

 私たちの日常生活でも、病気や経済的困難、人間関係の問題など、喜べないことが多くあります。それでもパウロは「主において」喜ぶことの大切さを強調しています。本当の喜びは一時的な感情や状況ではなく、神さまとの深いつながりから生まれるものです。彼は「主は近くにおられます」と語り、その確信があるからこそ、どんな困難の中でも喜ぶことができるのです。

2. 寛容な心と主の臨在

 次に、「あなたがたの広い心が、すべての人に、知られるようになさい」というパウロの言葉に注目します。これは日本語で言う「思いやり」の心を持つことを意味します。

 具体的には、混雑した電車で押されても「相手も急いでいるのだろう」と思いやる、お店の対応が悪くても「店員さんも忙しいのかな」と考える、家族と意見が衝突したときも自分を押し通さずに相手を思いやる、などです。

 しかし、これらを実践するのは容易ではありません。人間は感情的になりやすく、自分の都合や感情を優先しがちです。どうすればそのような心を持つことができるのでしょうか。

3. 感謝をもって祈り、神の平和を得る

この春、私自身がコロナに感染したときのことです。体が全力でウイルスと戦っていたため、神経が高ぶり眠れず、血圧や血糖値も上がりました。最近になって、ストレスでも同じような体の反応が起こることを知りました。

 先週、私が手伝っている障害者のグループホームの方針で悩んでいたときも、同様に眠れず、血圧や血糖値が高くなりました。ストレスが健康に及ぼす影響は計り知れず、心身のバランスを崩します。

 がんの専門医である石黒先生がおっしゃっていたのですが、「健康のために朝やるべきこと」の一つは「感謝をする」ことだそうです。医学的な研究でも、感謝することでストレスホルモンが減少し、免疫力が高まることが確認されています。

 パウロも「どんなことでも、思い煩うのはやめなさい。感謝を込めて祈り、願いを神に打ち明けなさい」と勧めています。思い煩うと心が重くなり、神さまから目が離れてしまいます。しかし、感謝すべきことを一つ一つ思い出して祈ることで、神さまとの交わりが深まります。

 そうすれば、「人知を超える神の平和」が心と考えを守ってくださいます。これは、人間の理解を超えた神さまの平安であり、状況がどんなに悪くても感じることができる安心感です。感謝と祈りを通して、それを体験することができます。

4. 良きものに心を留め、信仰を実践する

 さらにパウロは、「すべて真実なこと、気高いこと、正しいこと、清いこと、愛すべきこと、名誉なこと、徳や称賛に値することを心に留めなさい」と述べています。

 心がどこに向いているかで、その人の行いは変わります。ネガティブなことに心を奪われていれば、行動もネガティブになりがちです。しかし、良いことに心を向けていれば、自然と良い行いをしようとするものです。

 そして、「わたしから学んだこと、受けたこと、わたしについて聞いたこと、見たことを実行しなさい。そうすれば、平和の神はあなたがたと共におられます」とパウロは続けます。

 信仰はただの知識で終わらず、祈りも祈るだけで終わらず、行いに現れていきます。その行いを通して神さまとの関係が深まり、深まった関係がさらに良い行いを生み出します。そうした良い循環が周囲にも広がり、水面に投げた石が波紋を広げるように、影響が拡大していきます。

5. 結論

今日の聖書を通して、私たちは多くのキーワードを学びました。

 「主にあって喜ぶ」:一時的な感情や状況ではなく、神さまとの深いつながりから生まれる喜び。

「広い心」:思いやりや優しさ、忍耐、赦しを持って他者に接する。

「思い煩うな」:思い煩うことで心が重くなり、神さまから目が離れてしまう。

「感謝」をもって「祈る」:感謝と祈りを通して神さまと交わり、平安を得る。

み言葉を「心に留めて」「行い」で示す:信仰を実践し、良い循環を生み出す。

これらを実践することで、「神の平和」が私たちの心に訪れます。そして、その平和が水面に投げた石の波紋のように、神さまの愛の輪が広がっていきます。

 実は、これらの教えは現代の心理学や医学でも認められており、実用化されています。私のスマートフォンには「マインドフルネス」という機能があり、感謝の言葉を口にすることで心の平和を感じることができます。例えば、スマートフォンに「今日も健康で過ごせたことに感謝します」「友だちがいてくれたことに感謝します」と話しかけて文章にすることで、自然と心の平安を感じることができます。また、ストレスを感じたときに深呼吸をするだけでも効果があります。

 しかし、パウロが教える感謝や祈りは、それをはるかに超えた「霊的な」平安です。それは、神さまとのつながりから体験できるものです。「主にあって」「主において」とは、神さまとの深いつながりを意味しています。

 日常の中で神さまに心を向ける時間を持ち、神さまとの関係を深めていくことで、神さまは私たちの心に平安を与えてくださいます。特別な場所や時間でなくても、日常の中で神さまに心を向けることで、「神の平和」を体験することができます。

 どうぞ皆さまも、日常生活の中で感謝と祈りを実践してみてください。それが「神の平和」を体験する第一歩です。

日本基督教団 板橋大山教会

日曜礼拝:  子どものための礼拝 9:30~  大人のための礼拝 10:30~ 173-0013 東京都板橋区氷川町47-3 電話:03-3964-4139